UARTとは
UARTは、シリアル通信を実現するためのハードウェアデバイスです。この技術は、データをビットの連続として非同期的に送信することを可能にします。UARTは、送信者と受信者が同じクロック速度で動作することを前提としているため、クロック信号を共有する必要はありません。
UARTの通信方式
UART通信は主に以下の特徴を持っています。
- スタートビットとストップビット:各データフレームの開始と終了を示します。
- パリティビット:データのエラーチェックを提供します(オプション)。
- データビット:通常は8ビットで、1バイトのデータを表します。
UARTの発祥と必要性
UART技術は、初期のコンピュータ通信において開発され、端末とコンピュータ間のシンプルなデータ転送に広く利用されました。今日では、そのシンプルさと広範なサポートにより、マイクロコントローラ間の通信やセンサーからのデータ読み取りなど、多様なアプリケーションで使用されています。
Arduino UNOでのUARTの利用
Arduino UNOは、ATmega328Pマイクロコントローラを搭載しており、一つのUARTインターフェースを提供しています。Arduino環境では、このインターフェースを使って簡単にシリアル通信が行えます。
物理的なピン配置
- 0番ピン(RX):データの受信に使用します。
- 1番ピン(TX):データの送信に使用します。
基本的なUART設定と利用方法
ArduinoプログラムでのUARTの設定は非常にシンプルです。以下のステップに従います。
void setup() {
Serial.begin(9600); // ボーレートを9600に設定
}
void loop() {
Serial.println("Hello, UART"); // メッセージを送信
delay(1000); // 1秒間隔で繰り返し
}
サンプルプログラム
UARTを使用してセンサーデータを読み取り、それをシリアルモニタに出力する基本的なプログラムです。
void setup() {
Serial.begin(9600);
pinMode(A0, INPUT); // アナログピンを入力として設定
}
void loop() {
int sensorValue = analogRead(A0); // センサーからのデータを読み取る
Serial.println(sensorValue); // データをシリアルポートに出力
delay(200); // 200ミリ秒待つ
}
UARTとUSERTの違い
UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)とUSART(Universal Synchronous/Asynchronous Receiver/Transmitter)は、シリアル通信を行うための技術ですが、機能と用途にいくつかの重要な違いがあります。
UART (Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)
UARTは非同期シリアル通信に使用されるデバイスで、特定のクロック信号に同期せずにデータを送受信します。主な特徴としては以下のようなものがあります:
- 非同期通信: 送信側と受信側は互いに独立しており、共通のクロック信号に依存しません。
- スタートビットとストップビット: 通信の開始と終了を示すために、データパケットの前後にスタートビットとストップビットを設置します。
- パリティビット: オプショナルでエラーチェックのためにパリティビットを含めることができます。
USART (Universal Synchronous/Asynchronous Receiver/Transmitter)
USARTは、UARTの機能に加えて、同期通信もサポートする拡張されたデバイスです。同期通信では、送受信されるデータはクロック信号に同期して行われます。USARTの主な特徴は以下の通りです:
- 同期および非同期通信のサポート: USARTは、必要に応じて同期通信または非同期通信を選択できる柔軟性を持っています。
- クロック信号: 同期モードでは、データの送受信がクロック信号に同期して行われるため、通信速度を最大限にコントロールできます。
- フレームフォーマットの多様性: USARTは、データ長、パリティ、ストップビットの数など、より柔軟なフレームフォーマット設定をサポートしています。
主な違い
- 通信モードの柔軟性: USARTは同期と非同期の両方の通信モードをサポートするのに対し、UARTは非同期通信のみをサポートします。
- クロック信号: USARTの同期モードでは外部または内部のクロック信号を使用してデータの同期を取りますが、UARTではクロック信号は使用しません。
- 使用用途: USARTはデータ通信が高速であるか、正確なクロック同期が求められる用途に適しており、UARTは比較的低速でクロック同期が不要なアプリケーションに適しています。
このように、USARTはUARTの機能を拡張したものと考えることができ、より多様な通信ニーズに対応するためのデバイスと言えます。
SerialとRS232Cとの違い
Serial Communication (シリアル通信)
シリアル通信は、データを一連のビットとして一つずつ連続的に送信する通信方式です。UARTはシリアル通信の一形態を提供するものの、シリアル通信自体はさまざまなプロトコルやインターフェース(例えばSPI、I2C、USBなど)で実現されます。
- 広範な規格: シリアル通信は多くの異なるプロトコルやインターフェースにまたがります。
- 多様な用途: データ転送の基本的な方法として、多くの電子デバイスで広く使われています。
RS-232C
RS-232Cは、シリアル通信の規格の一つで、主にPCと外部デバイス間のデータ通信に使用されるインターフェース規格です。この規格は、電気的な特性、コネクタの形状、ピンの配置などを定めています。
- 長距離通信: RS-232Cは最大で15メートルの通信距離をサポートすることができます。
- 電圧レベル: 通常、データラインは±3Vから±25Vの電圧で動作します。この高い電圧レベルはノイズに強いが、現代のロジックレベル(0Vと3.3Vまたは5V)とは異なります。
- コネクタ: 通常、DB-9またはDB-25タイプのコネクタを使用します。
UARTをレジスタ操作で制御する方法
Arduino UNOのATmega328PマイクロコントローラでUART通信をレジスタ操作により制御するサンプルプログラムを以下に示します。このプログラムは、基本的なUART初期化と送信を行います。受信側の機能も必要な場合、さらなる拡張が可能です。
UART送信の設定
#define F_CPU 16000000UL // クロック速度を16MHzに設定
#define BAUD 9600 // ボーレートを9600に設定
#define MYUBRR F_CPU/16/BAUD-1
#include <avr/io.h>
#include <util/delay.h>
// UART初期化関数
void uart_init(unsigned int ubrr) {
// ボーレートを設定
UBRR0H = (unsigned char)(ubrr >> 8);
UBRR0L = (unsigned char)ubrr;
// 送信と受信を有効化
UCSR0B = (1 << RXEN0) | (1 << TXEN0);
// フレームフォーマット設定: 8データビット, パリティなし, 1ストップビット
UCSR0C = (1 << UCSZ01) | (1 << UCSZ00);
}
// 文字送信関数
void uart_transmit(unsigned char data) {
// 送信バッファが空になるのを待つ
while (!(UCSR0A & (1 << UDRE0)));
// データを送信バッファに載せる
UDR0 = data;
}
// 文字列送信関数
void uart_print(const char *str) {
while (*str) {
uart_transmit(*str++);
}
}
int main(void) {
uart_init(MYUBRR); // UARTを初期化
while (1) {
uart_print("Hello, UART!\n");
_delay_ms(1000); // 1秒待機
}
}
説明
- マクロ定義:
F_CPU
はクロック周波数を指定します(Arduino UNOは16MHz)。BAUD
はボーレートを指定します。MYUBRR
はUSART Baud Rate Registerの値を計算します。これはUART通信の速度を設定するために使用します。
uart_init
関数:- ボーレートを設定し、送受信を有効にします。
- データフォーマットを8ビットデータ、ノンパリティ、1ストップビットに設定します。
uart_transmit
関数:- 送信バッファが空になるまで待機し、データを送信バッファに書き込みます。
uart_print
関数:- 文字列を一文字ずつ送信関数に渡して送信します。
このプログラムは、Arduino IDE以外での純粋なAVRプログラミングを想定しています。Arduino IDEを使用する場合、main
関数は通常のsetup
およびloop
関数に置き換えられ、適宜Arduinoの書式に合わせて調整する必要があります。
UARTが使用される現代の応用事例
UARTは、GPSモジュール、RFIDリーダー、温度センサーなど、多岐にわたるデバイスとの通信に使用されます。また、デバッグや診断目的でのログ出力にも頻繁に利用され、その柔軟性と簡潔さから多くの開発者に支持されています。
まとめと今後の見通し
UARTは、その堅牢性とシンプルな実装により、今後も多くの組み込みシステムで基本的な通信インターフェースとして使用され続けるでしょう。Arduinoをはじめとするプラットフォームでのアクセシビリティの高さは、この技術がさらに多くのプロジェクトとアプリケーションで活用される基盤を形成しています。
参考文献
本記事の執筆にあたっては、以下の資料を参考にしました。
- Arduino公式ドキュメント
- ATmega328Pデータシート
- 各種技術ブログとフォーラムの投稿
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